翌日アレスに王城の魔道具を開発した研究室まで送り届けられた。そのまま名残惜しそうにするアレスを見送って、せっかくだから魔石板の加工をしようと着替えをすませる。持ってきた黒いエプロンをつけたところで、ノックの音が部屋に響いた。

「ロザリア様ー! お会いできて嬉しいですわっ!」
「ジュリア様、お世話になります」

 扉を開ければツヤツヤした頬をほんのり紅く染めたジュリア様が満面の笑みで抱きついてきた。
 ラクテウスに戻ってきてからはお互いに行ったり来たりして、この二ヶ月ほどお茶を飲んだり食事を共にしたりと親交を深めている。

 そうだ、今なら話してもいいかもしれない。
 今までも私の話をちゃんと聞いてくれていた。ハッキリと意見も言ってくれるし、相談相手に最適だと結論づけてお茶の準備をはじめる。
 ソファーに並んで腰掛け、一息ついてから口を開いた。

「あの、ジュリア様。聞きたいことがあるのです」
「はい! 何でしょう? 何でも聞いてください!」
「実は、愛がどの様なものかわからないのです」
「愛?」
「はい……アレスに番として求婚されてますけど、自分の気持ちに自信がなくて返事できずにいるのです」