不謹慎だと思っているのに、身体が勝手に反応してしまう。
 この生体反応は明らかにおかしい。アレスに強烈に想ってもらえたら嬉しいなんて考えてから、さらにおかしくなっている。でも今はジュリア様を助けるのが最優先だから、なんとかそちらに意識を集中させた。

「ここだわっ! この屋敷にジュリア様がいる!!」

 私の声を聞いたカイル様はさらに加速して屋敷へと突っ込んでいく。竜王様たちは一旦足を止めて、屋敷が見下ろせる大木にとどまった。

「まったく、暴走しすぎだわ」
「仕方ないよ、ジュリアの居場所がわかったんだ。まあ、周りに被害が出ないように結界張るしかないかな」

 竜王様は魔力を解放して屋敷を取り囲むように、強力な結界を張っていく。一枚だけでも国家防衛レベルなのに、それを二枚、三枚と重ねていく。竜王様の実力が垣間見えた。

「アレス、帝国軍へ通報してきなさい。ここは奴隷商人の屋敷なの。カイルの様子だと制圧まで十分とかからないわ」
「お嬢様がいるから無理」
「竜王様は結界を張っているし、私は帝都で動いていて顔が割れているからアレスが適任よ。ロザリアはアステル国の元王太子妃で顔バレする危険があるから連れていけないわ。私が守るから安心しなさい」
「……お嬢様、五分で戻ります」

 アレスが一瞬ものすごく嫌そうな顔をしたけど、状況的に仕方ないと判断したのか転移魔法で姿を消した。私はサライア様に肩を抱かれたまま、アレスが戻るまで大人しく待つことになった。