でも今では机の上に積み重なっていく書類ばかりが気になって、ボクの時間を無駄に奪っていく害虫のように感じている。しかも話す内容はドレスが欲しいだの、装飾品が欲しいだの金を使うことばかりだ。
 すでに婚約者に使うための予算もないと伝えたのに、まだあれこれ要求してくる神経がわからない。
 本当にこの女を妻にして大丈夫なのかと、今更だが強い不安を感じていた。

「ボニータ、子が産まれたら王太子妃としての責務を果たさねばならないのはわかっているな?」
「もちろんです! まずはしっかりと勉強して、ちゃんとやりますわ!」
「ああ……頼んだぞ」

 そういえば、妊娠中は眠くなって覚えられないと、王太子妃教育もストップしたままだったと思い出す。
 この状況がいつまで続くのかとウンザリしはじめていた。



 ファンク男爵が失脚してから一ヶ月が経ち、事務官を追加してなんとか政務をこなしている状況だった。
 お腹の大きくなったボニータからの要求は子が産まれてからだと先送りにして受け流していた。前回休んだのはいつだったか思い出せないほど、ひたすら政務をこなし続けている。
 そんな擦り切れるような毎日の中でボクの心を打ち砕くような出来事が起きた。