そもそも私はウィルバート殿下に初めてお会いした時から嫌われていた。

 顔合わせのため登城して通されたのは、手入れの行き届いたバラ園だ。白や黄色、ピンクに赤と色とりどりの花たちが瑞々しく輝いていた。
 そんな花々が霞むほど輝いて見えるウィルバート殿下が現れたときには、これが本物の王子様なんだと感嘆した。

 最初の言葉を聞くまでは。


「お前がボクの婚約者か? はっ……それにしても地味な見た目だな。華がない。まあ、他のところは優秀みたいだからよろしく頼むよ」


 確かに私は魔道具の開発ばかりでオシャレや流行りにはうとく、ドレスも何となくヤボったい。明るめとはいえ平凡な茶髪に深緑色の冴えない配色で、キラキラしたウィルバート殿下と並ぶとどうしても見劣りしてしまう。

 ウィルバート殿下が恥ずかしくないように今更だったけど自分を磨き始めた。それと並行して王太子妃の教育も始まり、今まで目を逸らしてきた淑女教育を身につけるので必死だった。