「それは……できれば避けたいわね」
「古代スピア帝国の話をご存知ですか?」
「ええ、二百年前に神の怒りを買って天変地異が起きて国が滅びたと……まさか」
「ええ、その犯人が目の前にいます」
「えっ! 竜王様が!? すごく若く見えるけど……」
「成長期を過ぎると見た目は変わらないのです。それに竜人の寿命は三百歳から五百歳と長寿です」
「そんな昔のことはいいから、とにかくカイルとジュリアを助けたいんだ」

 竜王様の瞳の奥に子を想う親の愛情を感じた。竜王様はきっと過去の自分とカイル様を重ねて、心を痛めておられるのだろう。
 どこまでできるかわからない。けれど挑戦もせずに諦めたくはないし、何よりアレスの家族が苦しんでいる。

「わかりました。必ず作るとお約束はできませんが、それでもよろしければ依頼を受けます」
「本当に!? ありがとう……本当にありがとう……」

 ほんの僅かに肩を震わせて、竜王様は深く頭を下げてくれた。