○潤は観光客団体に巻き込まれて流されてしまっていた。

潤(ぎゃわわわわ)

 ぺっ、と流れからはじき出されて解放される潤。もみくちゃ。

潤「ここどこ? 皆とはぐれちゃった……」

 スマホを取り出そうと荷物をガサゴソ。そこへ、先ほどの団体とは別の外国人観光客一人に声を掛けられる。

観光客「スミマセン、ココへ行キタイですが、知りませんか?」

 差し出されたスマホにはうどん屋さんの写真が写っている。
 観光地でもなく、チェーン店でもない外観に困惑する潤。

潤「あ、はい。えと、ちょっと待ってくださいね」
観光客「SORRY、昔、この辺にあったハズなんですが」

 スマホを取り出すとちひろからの着信。

ちひろ『潤~? どこ?』
潤「ごめん、わたしは大丈夫だから先に行ってて」

 と手短に済ませ、店名で検索をかけてみる。

潤「あ、あった。ありましたよ。四月に移転したそうです」
観光客「OH」
潤「今はこの駅の側ですよ」

 観光客の持っていた地図の地名に丸をつけてあげるなどする。

観光客「ヨカッタ~。これ、食ベルタメに京都モドッテ来たの」
潤「へえ~、そんなに美味しいんですね」
観光客「ソウ、いつか、ココに住むのが夢」

 にっこり笑った観光客。
「ここに住むのが夢」と言う言葉は潤の心に少し刺さる。
 お礼を言って去って行く観光客と別れた潤は、「皆のところに戻らないと……」と気を取り直した。

葉澄「潤!」

 そこへ葉澄が走って探しに来てくれる。一生懸命探してくれたらしい。

潤「葉澄くん……」
葉澄「さっきの誰。何してんの」
潤「あ、えと、道案内を頼まれて……」
葉澄「……道案内……」

 心配そうに駆け寄ってくれた葉澄だが、そこでようやく喧嘩(?)していたことを思い出してそっぽを向く。

葉澄「と、とにかく、皆向こうで待ってるから」
潤「待って、葉澄くん」

 離れていこうとする葉澄。潤は後ろから抱きついて引き留めた。