○夏休みを終え、新学期が始まった教室。休み時間。
 教室の外には大勢の女生徒たち。
 彼女たちの目当ては葉澄で、一目本物を見ようと休み時間になる度に集まってきては廊下できゃあきゃあしている。

クラスメイト「なんかもう慣れたな」
クラスメイト「わかる」
クラスメイト「なんなら芸能人の気持ちもちょっとわかった」
クラスメイト「わかる」

 悟った顔をしているクラスメイト達。

ちひろ「すっごいねー」
彩香「ちょうど夏休み公開だったもんね」

潤モノローグ(映画が公開されて、葉澄くんはますます人気者になってしまいました)
潤(葉澄くんが直接テレビに出ることはないけれど……)※人見知りだからバラエティの仕事などは断っている。

・テレビ番組で「オフショットでーす」とアレンや凛々子が葉澄とのショットを公開したり。
・アレンがSNSに写真を上げて「いいね」がたくさんついていたり。
・雑誌で「今注目の若手」と紹介されたり。

潤(着実に葉澄くんのファンが増えています)

 葉澄がちらりと廊下の方を見る。女子がきゃ~~~!
 葉澄は見るんじゃなかった……というテンションでサッと視線を逸らし、鞄を持って立ち上がった。

葉澄「潤、ごめん。俺、今日早退だから」
潤「うん。また明日ね。仕事頑張って!」
葉澄「……ん。また明日」

 潤にだけ向けられた甘々な笑顔。
 ついでのようにちひろにシール(※)を渡す。

葉澄「森口、これ」
ちひろ「!!! くれるの⁉」
葉澄「うん。じゃ……」

 教室を出た葉澄は「急ぐから……」と女の子たちに退いてもらう。知らない女子たちには愛想ゼロの塩対応。
 三人はその様子を見送る。

彩香「何もらったの?」
ちひろ「『ずぅこれ』の……シールっ!!!」

 2点と書かれたシール。
 パン祭りのようにポイントシールと引き換えにキャラクターのぬいぐるみがもらえるというもの。
 (●キャラにちなんだ菓子パンが売られてて、それにポイントシールがついている……などどうでしょうか?)

 教室後ろの黒板(あるいは壁)に「協力してください! ちひろ」と書いた応募シートを貼ってあり、クラスの協力を募っていた。

潤「わたしもあるよー、はい」
ちひろ「ああっ、ありがとー! あと6点!」
ちひろ「いやー、でも、まさか、御門くんまで協力してくれるなんて……」
彩香「ね。こういうの興味なさそうなのに」
彩香「潤の友達だから、かろうじて『会話してやってもいい』と思われてる?」
ちひろ「それはあるかも。目は合わせてくれなかったけど」笑

 葉澄から見て、
 家族・潤・マネージャー(安全圏)
 アレン・ちひろ・彩香、(まあ安全?)
 クラスメイト(知り合い)
 共演者(知り合いと言えなくもない)
 それ以外(他人、無理)
 ……のクラスメイトよりもやや近い枠に入れて貰えてるような気がする~というちひろ&彩香。

潤「う、うーん……」
潤(葉澄くんはこういうの、『協力したいけど俺なんかが急に話しかけて変な奴だと思われたらていうかそもそも仲良くないし云々』て悩んでそう……)

 段々葉澄のことがわかってきた潤。多分、「興味がないふり」をしていただけのような気もする。
 潤と一緒にいるおかげで人に話しかけるハードルが下がったならいいことかな? と納得。
 そこに陽キャ男子山田が誇らしげに登場。

陽キャ山田「ふん、お前らだけだと思うなよ! 見ろ! 俺も御門に貰った!」

 山田もパン祭りのシールか何かを集めていて嬉しそう。

 外にいる女子たちは「御門葉澄が触ったシール?」とギラギラした視線を送っているが、

陽キャ山田「クラスメイトの特権だよな~!」
ちひろ「ね~っ!」

 と女子たちにマウントをとって笑っている。潤は苦笑しながらも、

潤(葉澄くん、少しずつクラスに馴染んできたみたい)

 いつまでも廊下に溜まっている女子たちに対し、「はいはーい。帰ってくださーい」「盗撮はダメだよ」と追い返したり注意したりするクラスメイトもいる。
 潤が転校してきた時は、皆が葉澄に気を遣っているような感じだったが、皆も少しずつ葉澄に慣れてきた様子。
 いいクラスだな、とほっこりする潤。
 ほのぼのとした暮らしに幸せを感じている。

潤(こんな毎日が続くといいな……)