○昼休み、空き教室

芽生「……へぇ、そんな経緯でねぇ」
<お弁当を食べながら、感心した様子>

千和「うん。自分でも信じられないよ……」
<うつむきがちで、ぼそぼそ食べている>

芽生「でも生徒会に入ることになったっていうのは嬉しいな! 一緒に頑張ろうね!」
<にこっと>

千和「う、うん。そうだね。入ったからには頑張るよ」
<気合を入れる顔>

千和(『秘密を知っちゃったから』ってところは濁したけど……)
<ほっとした>

千和(なんとか信じてもらえて良かった……)

○回想(それぞれ1カットずつ)

<朝の交際宣言のあと、女子たちに囲まれ、詰め寄られている千和>
<午前中、休み時間に質問責めにされていた様子>
<昼休みになるなり、芽生が千和の首根っこを掴んでダッシュで教室から逃げた様子>
<千和はお弁当の包みだけ掴んで焦っている>
<二人で遠くの空き教室に避難して、ぜぇはぁしている>

○回想終わり

○現在

芽生「それにしても、今日はすごい騒ぎになったねぇ」
<思い出してため息>

千和「まったくだよ……晴陽ときたら、いきなり爆弾を落とすようなものだよ」
<ため息でおかずをつまんで、つい言ってしまう>

芽生「きゃぁっ、『晴陽』だなんて!いきなり呼び捨てになるなんていいなぁ!」
<頬を押さえて羨ましそう>

千和「あ……、そ、そう呼ぶように言われてね!」
<ハッとした>

千和(意外と自然に出てきちゃった)
<自分に驚く>

芽生「あーあ、相坂先輩が彼氏になるなんてうらやましー!」
<上のほうを見て、はーっと息をつく>

千和「あはは……運……かな?」
<愛想笑い>

千和(良かったほうの運なのかはわからないけど)

○放課後、生徒会室
○みんなの前で挨拶している

千和「今度、生徒会役員になることになりました! 降矢 千和です!」
<緊張しつつ丁寧に>

千和「なにもわからないですが、頑張らせていただきますので、よろしくお願いします!」

○パチパチ(拍手の音)

○晴陽が千和の肩に手を置く

晴陽「別に俺と付き合ったから役員にしたわけじゃないからな。そこは勘違いしないように」
<ぴしっと言う>

役員女子1「そうなんですかぁ~」
<惜しそう>

晴陽「ああ。役員になるって決まったほうが先だから」
<にこやか>

千和(数分の差だよね!?)
<内心、突っ込み>

役員女子2「うう、でも会長と付き合うとか、いきなりすぎてびっくりしましたよぅ」
<恨めしそう>

晴陽「そうだよな。驚かせてごめん」
<爽やかな笑み>

○パンッ(晴陽が手を叩いた)

晴陽「さぁ、今日の作業をはじめるぞ。来月の文化祭の予算振り分けの続きだ」

役員たち「はい!」
<いい返事>

晴陽「千和はそっちで教えてもらうように」
<ひとつのテーブルを指差す>
<先輩の女子たちが何人かいる>

千和「は、はい!」
<緊張>

先輩女子1「降矢さん、こっちのテーブルで作業だよ」
先輩女子2「早く来て!」
<招いて急かす>

千和「はいっ!」
<緊張しつつ近寄る>

○作業テーブルで作業

千和「……なるほど。複雑ですね」
<一通り説明を受けて難しい顔>

先輩女子1「大変だと思うけど、降矢さん二年だから、早めにできるようになってね」
<淡々としている>

先輩女子2「うん。それにしても……」
<じとっとした目で見てくる>

千和「はい」
<きょとんと>

先輩女子2「いきなり会長を持ってくとか、度胸あるね」
<嫌味っぽく>

千和「……!」
<ハッとする>

先輩女子1「ファンクラブもあるっていうのに完全に抜け駆けじゃん」
<嫌味っぽく絡みはじめる>

先輩女子2「こんな地味な子、ノーマークに決まってるし。会長もどこが良かったんだか」
<鼻で笑うよう>

千和「スミマセン……」
<うつむいて一応謝る>

先輩女子1「あーあ、生徒会入った意味、なくなりそ」

先輩女子2「ほんとそれねー」
<気だるげに言い合う>

先輩女子1「じゃ、それ片付けといて」

先輩女子2「せめて仕事くらいちゃんとしてよ」
<指示して、やる気なさそうに去る>

千和「はい……」
<シュンとしてしまう>

○作業をしている

千和(歓迎されるわけないってわかってたけど……直面しちゃうと辛いな)
<うつむいて、手を動かしながら落ち込む>

千和(自分から晴陽を好きになって付き合ったんじゃないから、理不尽だって思っちゃうし)

千和(どうしたらいいのかな)

千和(あんまり卑屈になっても逆効果だろうし……)
<うじうじ悩んできてしまった>

千和(ああ……! 困っちゃうよぅ)
<内心、さじを投げたい様子>

○作業終わり

千和「ふぅ……これで終わりかな?」
<一通り終わった>

煎条(せんじょう)「お疲れ。終わった?」
(よう)がやってきて、爽やかに聞く>

千和「あ、はい!」
<どきっとして顔を上げる>

葉「チェックするから見せてもらっていい?」
<手を差し出す>

千和「はい! ……あっ」
<勢いよく渡したので、手が触れてしまう>
<どきっとする>

葉「あ! ごめん、つい」
<ちょっと驚いた顔をして謝る>

千和「いえ……私こそ」
<ほんのり頬を染めて謝る>

千和(あったかかった……)
<ちょっとドキドキしたなと思う>

葉「じゃ、はじめようか」
<資料の束を手に、解説をはじめてくれようとする>

千和「はい!」
<元気よく>

葉「敬語いらないよ。俺も二年だから」
<にこやか>

千和「そうなんですね……あ、そうなんだね」
<気付いて言い直す>

葉「俺、2-Eの煎条 葉。よろしく」
<爽やかな様子>

千和「『葉』? あれ……もしかして、煎条くんって」
<名前が引っかかって、聞き返す>

芽生「千和~! お疲れ!」
<そこへ芽生が片手を上げて近寄ってくる>

千和「あ、芽生」
<ぱっと明るい顔になる>

芽生「うまくできた……って、あれ! 葉じゃん」
<千和に向かって近付いてきたが、葉が一緒にいたと気付く>

葉「あれ? 芽生? 友達?」
<芽生を振り返り、意外そうな顔>

芽生「うん」
<ちょっと勢いが落ちる>

千和「えっと、芽生が話してた幼馴染の『葉』くんって、煎条くん?」
<思い当たったことを確認するように言う>

芽生「そうだよ。ちょっと葉! 千和に近付かないでよね」
<あまり態度良くなく肯定して、ぎゅっと千和の腕を抱く、牽制するよう>

葉「なんだよ。俺は作業を見てやるように言われて……」
<ちょっとムッとする>

芽生「それなら私が見るから!」
<機嫌悪そう>

葉「はぁ……わかったよ。じゃ、やっといて」
<やれやれという顔>
<去っていく>

芽生「ごめんね、千和。いきなり馴れ馴れしかったでしょ」
<腕から離れて、軽く謝る>

千和「そんなことないよ。あの……」
<言いづらくて言いよどむ>

芽生「うん……、あんまり仲良くないから紹介もしなかったよね」
<元気がない様子>

千和「そうだね。……なにかあったの?」
<おずおずと、心配そう>

芽生「ん……、また話すよ」
<うつむいて、濁す>

千和(なにか深い事情でもあるのかも……)
<心配になる>

千和「わかった。話したくなったら教えてよ」
<笑顔を浮かべてみせる>

芽生「ありがと。気を使わせてごめんね」
<ほっとして顔を上げる>