彼を部屋に招き入れる。
仕事内容は伝えてある。
モールの各店を定期的に巡回していると。
だから、アパート暮らしをしていることは伝えてあった。
連れて来たのは、今日が初めてだけど。

最後の夜くらい、彼に食事を手作りしてあげたかった。
昨日は半休にして、今日の為に腕によりをかけて準備をした。

「ちょっと待っててね?」

彼をリビングに通してテレビを観させておいて、私は着替えも兼ねて手早くシャワーを浴びた。


彼の好みは会話の中でリサーチ済み。
こういうのは仕事柄、得意中の得意。
とはいえ、味付けが合うかは別問題だが。

仕込んでおいたハンバーグを焼き始め、冷蔵庫から作っておいたスープを取り出し温める。
その傍らでサラダを手早く作って。

彼女と言える関係ではないかもしれない。
だけど、好きな人に手料理くらい食べて貰いたいから。

**

彼は和風ハンバーグが好物らしい。
和食も好きだというから、昨日幾つか煮物を作っておいた。
それを小鉢に盛ってダイニングに並べる。

予約炊飯しておいたご飯の炊き上がりを知らせるメロディーが鳴った。
彼の分のご飯をよそって彼の前に置くと、彼は何枚も写真を撮ってる。
誰でも作れる簡単な料理なのに……。

「どうぞ、召し上がれ♪」
「いただきます。ナナも」
「ん」

自分の分のご飯もよそって席に着く。
味見を何度もしたからそんなにお腹は空いてないんだけど。

「うまーーーい!!」
「ウフフッ、それはよかった」

美味しそうに食べてる姿を見れるだけで倖せ。
毎日作ってあげたいところだけど。
またいつの日か、作ってあげれる日が来るといいなぁ。