翌日、休日の私は勤務先のショッピングモールを訪れた。
彼の練習姿を見る為に。

昨夜帰り際に彼に誘われていた。
公演日以外の日中は練習しているから、と。

彼の邪魔は出来ないから、端からこっそり覗こうと思い、事務所で関係者のプレートを貰い、それを首に掛けてテントへと。

爆音とも言えるような大音量で演奏曲が流れていて、それに合わせて演目練習が行われていた。
テント内のメイン部分にはアクロバットの練習が行われていて、ジルの姿はそこには無かった。

スタッフに声をかけ奥へと進むと、ウェイトトレーニングをしているジルを発見した。
私が来たことをスタッフが彼に伝えると、タオルで汗を拭きながら彼が私の元へとやって来た。

30分後から空中ブランコの練習時間になるらしい。
それまでは自由時間らしく、ストレッチをしたり他のスタッフと会話している人もいる。
ジルがその場にいるメンバーを指差し、教えてくれた。

招かざる客なのか、メンバーの視線が突き刺さる。
好奇なものでも見ているかのように……。

「ジル?」
「OK」

目で合図して、席を外そうと伝える。
視線に耐え切れず、いたたまれなくなったからだ。
もしかして、ジルの恋人がこのサーカス団にいるのかもしれない。
だから、私が来たことで変な雰囲気になったんじゃないだろうか?

運動に付き合ってくれる子が好みだと言っていたから。
メンバー同士ならそれも可能だ。
同じ世界で認め合える存在は大きい。

「ジル、彼女はどの人?」
「ん?……彼女?恋人?」
「うん、紹介して」

本人にモールのスタッフだと挨拶すれば収まると思って。