紫陽花が泣く頃に



「ハア……ハア……っ」

雨の中を、ひたすらに走る。雨に濡れた制服が私の足を重くしていく。

美憂は周りをいつも笑顔にさせていたのに、私は周りから笑顔を奪う天才だ。

ごめんね。たしか、あの日もそうだった。






「あれ、高木さん?」

ふたりでコンビニに行くために歩いていた時、美憂と同じ学校の人と会ったことがあった。クラスメートだという友達は「今日は小暮くんとデートじゃないんだ~」なんて言いながら近づいてきて、おのずとその視線は私に向けられた。

「えっと、高木さんの友達?」

癇に障る聞き方だった。その時の私の格好はスウェットで、髪の毛も水で撫で付けただけの、だらしない姿だった。

「ううん。私たち双子なんだ」

うまく誤魔化してくれたらよかったのに、美憂はなんの悪気もなく、私を妹として友達に紹介した。

「え、双子?」

「あ、あんまり似てないね……」

友達は言葉を選びながら、気まずそうにしていた。私に心を読む力はなくても、なんて思ってるかくらいは想像がつく。


高木さんの妹なのに、可愛くない。

高木さんと双子なのに、こんなに違うの?

そういう感想が、顔に貼り付けられているみたいだった。それなのに美憂は、どこまでも能天気に、私のことを紹介し続けた。


「私たち似てないかな? たしかに和香ちゃんのほうが目は大きいし、身長も私より一センチ高いよね。あと和香ちゃんって、すごく料理が上手でなんでも美味しく作れちゃうんだよ」

……やめて。

「だから、和香ちゃんは私の自慢の妹なんだ!」

……やめてってば。

美憂が褒めてくれるほどに、私は恥ずかしくて、逃げたくて、たまらない気持ちになった。