紫陽花が泣く頃に



それから数日が経って、学校では期末テストがはじまった。今日の科目は数学と英語と日本史。期間中はすべて午前授業なので、テスト終了後すぐさま帰途についた。

「和香?」

その途中で、ふいに名前を呼ばれた。振り向くと、そこに立っていたのは……。

「え、お、お母さん」

思わず声が上ずった。母に会ったのは美憂の葬儀の時が最後だったから、実に一年ぶりだった。

「ごめんね。最近まともに掃除ができてないから、ちょっと散らかったままだけど」

私はそのままお母さんの家に招かれた。私も住んでいた場所とはいえ、実家という表現は違うし、もちろん我が家ではないわけだから、感覚的にはやっぱりお母さんの家と表現したほうがしっくりきた。


「ホットミルクティーでも飲む?」

「う、うん」

私は借りてきた猫のように、ソファーに座っていた。

お母さんの髪がショートカットからセミロングになっている。それに頬もだいぶ()けた。美憂を失ったショックが癒えてないことはわかっていたけれど、悲しみは一年経ってもみんなの心に深い爪痕を残している。

「ごめんね。ずっと連絡できなくて」

飲み物が運ばれてくると、お母さんは私の正面に腰を下ろした。

「べつに平気だよ。私も色々と忙しかったし」

色々という便利な言葉を使いながら、ティーカップに口をつけた。紅茶好きだった美憂のために、お母さんは様々な種類の茶葉を取り寄せていた。おそらくこれもそのひとつだろう。

「学校のほうはどう?」

「まあ、なんとかやってるよ」

「あの人は元気?」

「お父さんも元気だよ。長距離の仕事が多いから家を空けることのほうが多いけど」

「じゃあ、ご飯とか大変でしょう。洗濯とか家のことは全部和香がやってるの?」

「そんなの、三年前からずっとやってるよ」

少しトゲがある言い方をすると、お母さんは黙ってしまった。