紫陽花が泣く頃に



「……小暮は、美憂のどこが好きだったの?」

気づくと、そんなことを聞いていた。

「……どこって聞かれてもな」

「顔?」

「うーん。顔も含まれるかもしれないけど」

そもそも美憂のどこが好きだったのか、なんていう質問をしなくても、そんなの全部に決まっているのだ。

誰もが羨む容姿と天真爛漫な性格。双子の私が言うのはおかしいけれど、美憂はなにもかもが完璧だった。

「……俺は多分、美憂に憧れてたんだよ」

小暮が消えそうな声で呟いた。

「美憂を見てると、自分とは違いすぎて眩しかった。だからなんで俺のことを美憂が選んでくれたのかはわからない。でも、美憂が好いてくれる自分のことは好きでいたいと思ってた。俺は自己肯定が低い人間だから、そうやって思えること自体、奇跡みたいなことなんだ」

私はなぜか、泣きそうになった。

小暮が言葉にしたことが、全部自分と重なっていたからだ。

美憂は太陽みたいだったから、隣にいると私までそっちの人間になれるんじゃないかと錯覚した。

嫉妬心にかられて、美憂なんていなければいいと思っていたけれど、本当は、本当にね。

私は美憂になりたかった。

美憂みたいになれならと、思ってた。

でもそれを認めたくなかった。


――『私は美憂と双子になんてなりたくなかった』

そんなことを口にしてしまった後悔は永遠に消えない。

ずっとずっと心で謝っていても、彼女には届かない。  

罪悪感に苛まれている心は、崩壊寸前だった。