紫陽花が泣く頃に



「……小暮は美憂とどんな話をしてたの?」

私はカチッと強くホチキスを押した。放課後になっても黄昏色に染まらない教室。窓の外は相変わらずの雨模様。

こんな雨ばかりを見ていると、この町が晴れることなんて、この先もないんじゃないかと思ってしまう。

「色々話したよ。美憂は喋るのが好きだったから、いつも楽しい話をたくさんしてくれた」

じゃあ、水飴症候群のことも?

そう問おうとした時――。

「いたっ」

手元を見ずに作業していた私の指に、ホチキスの針が刺さっていた。じわりと滲んでくる血は、雨によって色を変えた紫陽花の赤に似ている。

「え、ケガした? 大丈夫か?」

「……うん」

「ちょっと見せて」

「あーこういうのって地味に痛いよな」

小暮が至近距離で、私の人差し指を見ていた。針は幸いにもすぐに抜けた。だから傷は深くない。なのに、私の心臓は痛いくらい速くなっていた。

「絆創膏は?」

「そんな女の子みたいなものを、私が持ち歩いてると思う?」

「なんで。柴田って普通に女の子じゃん」

一体どういう意味で言っているのか。小暮の言動や行動に、いちいち反応してしまって、平常心ではいられなくなっていた。