六歳になると、美憂も同じ小学校に通えることになった。美憂は幼稚園に行ってないから友達もいないし、学校のことは私が教えてあげなくちゃって、張りきってた。でも、その必要はなかった。
美憂には、すぐ友達ができた。私が友達だった子と、私よりも仲良くなって。私の名前を呼ぶよりも美憂の名前を呼ぶようになった。
それなのに美憂はいつでもお姫様扱いで、お母さんからは『美憂のことを守ってね』とお願いされてた。
だから私は自然に美憂から一歩引いた場所に立って、美憂になにかあったら守るという役目を背負ってた。
『大丈夫?』『走っちゃダメだよ』『薬は?』
なにかやりたいことがあっても、行きたいところがあっても美憂の傍にいた。
『美憂ちゃんがつけてるリボンが可愛い』
『美憂ちゃんが着てる洋服がほしい』
『美憂ちゃんがやらないなら私たちも中で遊ぶ』
みんな美憂のことが好きだった。彼女を取り巻いている世界だけが順調に回っていた。
『和香ちゃんにワンピースは似合わない』
『髪の毛も美憂ちゃんのほうがサラサラ』
『和香ちゃんじゃなくて美憂ちゃんがいい』
私のことを好きな人はいなかった。美憂の世界が輝いていく一方で、自分の世界が壊れていった。
いつしか美憂に対して嫉妬や劣等感が芽生えた。
美憂と双子でいることが嫌でたまらなかった。比べられないために、美憂と同じ服を着るのはやめた。
髪の毛も伸ばすのをやめた。誰とも関わらないようにした。そしたら、ひとりになった。
ひとりのほうが楽だと知った。
美憂は、私のことを好きだと言ってくれる。
でも本当は、私は美憂のことが嫌いだった。
そう思ってしまう自分は性格も心もなにもかもが狭くて醜い。
嫉妬、罪悪感、嫉妬、罪悪感、嫉妬。
出口のない悪循環のはじまりでもあった。