幼稚園に上がる頃には、なんとなく美憂の病気のことを理解していた。自分と美憂の扱い方に差があるということも。

私は一歳を迎える前に幼稚園に預けられたけれど、美憂は入園しなかった。その間、お母さんのことを独り占めできる彼女が羨ましかった。

『美憂は幼稚園に行ってないんじゃなくて、行けないのよ』お母さんからは何度も言い聞かされたけれど、幼稚園が休みの日でも、私はお母さんに甘えられなかった。

食事、お風呂、就寝。ぜんぶお母さんは美憂に付きっきりだった。美憂が泣くとすぐに駆け寄ってきて大袈裟なほど心配した。美憂と喧嘩をすると怒られるのはいつも私のほうだった。

美憂は病気だから、仕方ない。美憂だって我慢してることが、たくさんある。

そうやって納得しようとしても、発作が起きるたびにお母さんから抱きしめてもらってる美憂の姿を見ると、幼いながらに私も病気になりたいとさえ思っていた。