紫陽花が泣く頃に



放課後。校舎から出ると、鬱屈とした雨雲がさらに広がっていた。雨の音には脳をリラックスさせる効果があるらしいけれど、そんなやすらぎに耳を傾けている人なんて、俺の周りにはいない。

どこもかしこも、雨、雨、雨。

傘の消費量が一番多い町、なんていうランキングがあったら、間違いなく日本一になっているだろう。

ここは埼玉県北部にある町。

高層ビルよりも田んぼの数のほうが多くて、軽自動車よりも軽トラックのほうが走っているような田舎町だ。

地域の特産物も観光スポットも一切ないところだけど、この一年でずいぶんと有名になった。

〝雨がやまない町〟

世間ではそう呼ばれている。

去年の六月から降り続けている雨の原因は気象庁でもお手上げ状態で、なんの解明もされていない。

なにかの祟りだと言い出す老人もいれば、世界が終わる予兆だとアメリカ映画のようなことを言う人もいる。

365日、24時間降っている雨の影響は凄まじい。

この一年で商店街のほとんどのシャッターは閉められ、農家で生計を立てていた人たちはすぐに別の町へ移住を決めた。

そうやって人がいなくなり、寂れていく町を見て彼女はどう思っているだろうか。

――『千紘くん。こんな話、知ってる?』

いつものように、どこからか聞いた話を楽しそうに教えてくれた彼女。まさかそれが本当のことだったなんて……あの時は夢にも思わなかった。