翌日の学校。朝のホームルームでは担任から二週間後に行われる期末テストの話をされた。
「各教科の範囲はすでに伝えられてると思うけど、赤点だった生徒には夏休み中の補習授業が待ってる予定だから、気を引き締めて取り組むように」
「えーっ!!」
その言葉にクラスメートからブーイングが起きる。
ずっと代わり映えしない天気のせいで季節の感覚がないけれど、都心のほうでは梅雨が明けたとニュースで言っていた。
梅雨が終われば、夏が来る。でもこの町に夏はやって来ない。楽しみなことがないぶん、生徒たちの勉強に対する意欲は、日に日に落ちているようだった。
「ねえ、邪魔なんだけど」
そんな中、柴田の声が響いたのは、理科実験室へと移動を始めようとした直後だった。柴田の足は教室の扉の前にあり、その行く手には菅野がいた。
「ここを通りたいなら、俺の足の間をくぐっていけよ」
菅野は柴田にボールを当てられたことを根に持っている。噂では柴田の英語の教科書を隠したのも菅野だと言う。でかい図体をしてるくせに中身は子ども。それはみんなが思っていることではあったけれど、このいざこざに巻き込まれたくないと考えてる人が多いことも事実だった。
「なんで私がアンタの汚い足の間をくぐらなきゃいけないわけ? 邪魔だから早く退いてよ」
「退いてくださいってお願いしたら通してやるよ」
「うざ」
「あ?」
菅野は心が狭い。だけど耳に着けているピアスの穴は少しずつ拡張されている。それが強さの象徴であるかのように。



