紫陽花が泣く頃に



プレゼント選びは、かなり難航した。

『ヘアクリップはどう?』『多分使わないかも』『マニキュアは?』『それも塗らないかな』『無難にぬいぐるみとか?』『ちょっと子どもっぽい』

こんな感じで、なにを勧めてもお気に召さない。これは長期戦になりそうだと覚悟を決めながら、目の前にあったシャーペンを何気なく取った。

シャーペンには球体のチャームがついていて、中に綺麗なビーズが入っている。揺らしてみるとビーズが傾いて、海のさざ波のような音がした。

「なにそのシャーペン、可愛い……!」

飛びかかってくる勢いで、高木さんが大きな反応を示した。びっくりして、思わずシャーペンを渡した。彼女はそれを俺と同じように傾けていた。

「わあ……雨の音みたい」

「雨? 海じゃなくて?」

「雨だよ。ほら」と、わざわざ耳元で聞かされたけれど、やっぱり俺にはさざ波のほうがしっくりくる。

「プレゼントこれにする!」

今まで悩んでいたのが嘘のように、高木さんは即決だった。プレゼントにシャーペンというのは一番ありがちだけど、そんなに喜ばれないイメージもあったりする。不躾に値段を確認すると680円だった。

……た、高っ。俺の中でシャーペンは200円以上しないと思っていた。

「今、シャーペンのくせにけっこうな値段がするなって思ったでしょう?」

すぐさま高木さんに顔色を読まれてしまった。

「……思いました」

「女の子の持ち物は色々とお金がかかるんですよ?」

「本当にそれでいいの? キャラクターの顔が動くシャーペンもあるみたいだけど」

「うん。これがいいの」

高木さんは大事そうにシャーペンを胸に当てた。

俺は誰かにプレゼントを贈ったこともなければ、贈られたこともない。でもこうやって相手のことを考えて選んでいる姿を()の当たりにすると、例えこれが安いシャーペンであってもいいんだと思った。

プレゼントは値段ではなく心。そんなくさいセリフを反芻してるうちに、シャーペンは可愛くラッピングされていた。