「ねえ、そろそろどこに行くのか教えてくれない?」
校舎から出たあと、高木さんは終始早歩きだった。スマホの時計を確認しながら、少し焦っているようにも見える。
「とりあえずあと五分で電車が来ちゃうから急ごう!」
「え、電車に乗るの?」
「そうだよ。早く!」
戸惑う俺なんてお構い無しに、高木さんから手を引っ張られた。彼女の手は柔らかかった。指は折れそうなほど細く、感触はさらさらしていた。
小学校の頃、フォークダンスを踊る機会があった時に女子の手に触れたことがある。たしか曲はマイムマイムだった。
女子はわかりやすく、カッコいい人とそうじゃない人を分けていて、当然俺は素っ気なくされるか、あるいは触れているふりをされた。それだけ女子は、手を繋いでもいい人なのかどうかという基準を明確に持っているものだと思ってた。
なのに高木さんは、あっさりと俺の手を握ってきた。
……誰にでもする人なんだろうか。可愛い女の子に触られて嫌な男はいないと思うけど、普通に俺のことが好きなのかなって、勘違いされても文句は言えないと思う。
高木さんに言われるがまま電車に乗り込み、俺たちは出入口に近い座席に腰を下ろした。座った瞬間に、別に隣同士に座らなくてもよかったことに気づいた。だってこんなところを同じ学校の人に見られたら、変な噂が立つかもしれない。
「ぶどうのチューインガム食べる?」
でも彼女はそんなこと微塵も心配してない様子だった。
冷静に考えれば、高嶺の花と称されている高木さんと、村人Bにもなれない俺が噂なんてされるはずがない。彼女からもらったチューインガムは、胸焼けしそうなほど甘かった。



