紫陽花が泣く頃に




柴田から「ありがとう」と言われたのは、昇降口で靴を履き替えたタイミングだった。

俺が反応するよりも早くそそくさと行ってしまって、教室には別々で入った。といっても隣の席なので、また必然的に横に並ぶ形になる。

空席だらけだった教室は、ここ最近ずいぶんと賑やかになってきた。B組と合同になったことでクラス替えをしたような初々しさがあり、結果としてひとクラスにまとめられたことは生徒にとっても良かったのかもしれない。

そんな中で、俺は積極的にコミュニケーションを取るわけでもなく、視線は相変わらず窓の外のばかり。隣の柴田も同じようで、他者を拒絶するように耳にイヤホンを装置していた。

ある意味、俺たちは考え方が少しだけ似ていて、周りからすると浮いた存在に見えているんだろう。

『ねえ、どうしていつもひとりでいるの?』

ぼんやり浮かんでくるのは、初めて美憂と会話をしたあの日のことだ。