雨の日の無気力は、科学的に立証されてるらしい。
低気圧がどうとか。大気の量がどうのとか。たぶんいつかの理科の授業で聞いた覚えがあったけれど、詳しいことは記憶に残っていない。
俺は白紙のノートを広げながら、また視線を外に向けた。
窓をつたって落ちてくる雨雫。雨は重力に逆らうことなく下に流れていくけれど、その方向はバラバラで、まるで意思が存在してるようにも見えた。
予測できない雨の動きに、目を奪われる。
同時に頭に浮かんだのは、無邪気でからかい上手の〝彼女〟のことだった。
この〝やまない雨の正体〟に気づいている人は、おそらく俺しかいないだろう。
みんな異常気象だと気持ち悪がっているけれど、俺だけは違う考えをもっている。
雨が降り続けている限り、雨がやまない限りは、彼女がまだこの世界にいてくれているように思う。
――『ねえ、千紘くん』
また俺の名前を呼んでほしい。
もう一度、あの笑顔に会いたい。
そうやって願えば願うほど、雨はだんだんと強くなっていく。