紫陽花が泣く頃に



各々席に移動することになり、私がくじどおりの場所に向かうと、すでに小暮は自分の席に着いていた。

なんでこんなことになっちゃったんだろう。

みんな自己紹介がてら「よろしくね」と、隣の人に挨拶をしてるけれど、私は目を合わさずにそのまま座った。

それから否応なしに二限目の英語が始まった。隣に小暮がいるだけで、気持ちが落ち着かない。次の席替えって、いつやるんだろう。学期ごとに変えるなら、あと一カ月我慢すればいいことだけど……私にとっては途方もない時間だ。

「柴田さん、教科書を出してください」

ぼんやりしていたら、先生に注意された。机の中に入れたばかりの教科書から英語を探したけれど、なぜか見当たらない。

「どうしたんですか?」

「……教科書がありません」

他の教科書はある。でも英語だけがない。教科書はすべて置き勉にしてるから、ないなんてことは絶対にありえないのに。

「忘れたのなら隣の人に見せてもらってくださいね」

だから、忘れたんじゃないんだって。そんな心の言い訳が通用するはずもなく、先生は二十三ページを開くように指示を出した。

なんで教科書がないのか。なんで隣の人に、なんて余計なことを言うのか。不満ばかりが込み上げていたけれど、そんな中でガタッと小暮から席を近づけてきた。

きっと小暮だって、私と隣なんて嫌だろうに。机だってくっつけたくないはずなのに、彼は私が見やすいように教科書を真ん中に置いてくれた。

ありがとう、なんて言えなかった。今まで散々小暮に対して失礼な態度をしてきた私には、言えるはずもなかった。