ざあざあ、しとしと、ばらばら。
雨の音は毎日違う。いつしか窓から見える灰色の空は見慣れたものになった。
雨に飽きる、なんて言えば、雨が降らずに苦しんでいる国の人には悪いけれど、この町に住んでる人はみんな思っている。
明日にはやむだろう。週末は晴れるかもしれない。梅雨の時期が終われば、 なんて希望を口にする人もいつの間にかいなくなった。
この雨に、四季の移り変わりなんて関係ない。
この雨は、かれこれ365日間、やむことを忘れたかのように降り続けているのだから。
「次はここの問題を……」
数学教師がチョークを片手に、教室を見渡していた。
この高校に入学した時、クラスメートは二十八人いた。でも気づけばひとり、またひとりといなくなっていって、今では半分以下の十三人しか残っていない。
そんな空席ばかりが目立つ教室では日替わりで生徒を指名しても、わかりやすく十三日ごとに自分が当てられる日がやってくる。
「じゃあ、小暮」
予想どおり、自分の名前が呼ばれた。
「……わかりません」
小さな声で答えると、先生は大きなため息をついて、すぐに別の人を指名していた。