紫陽花が泣く頃に




うんざりする。それが最近の口癖だ。

長ったらしい古典の朗読を聞きながら、私は机に頬杖をついていた。

思春期なんていう言葉では表せないほど、目に映るものすべてが癇に障る。まるで、いつ爆発してもおかしくない時限爆弾を抱えている気分だ。

「ねえ、柴田さん。真奈美が来週転校しちゃうでしょ。それでみんなで三〇〇円ずつ集めてプレゼントを贈ろうって話になってるんだけど」

終業のチャイムとともに、近づいてきたのはクラスメートの女子だった。真奈美とはおそらく、みんなから『真奈』と呼ばれていた女の子だ。

「なんで私がお金を出さなきゃいけないの?」

話したこともなければ、友達でもなかった人なのに。 

「柴田さんだけじゃなくて、みんなに頼んでることなんだよ」

それでも、なんでって思う。おそらく転校の理由はこの雨が絡んでいる。

そんな人は他にもいっぱいいたけれど、プレゼントなんて贈ってなかったはずだ。真奈美って子がクラスの中心人物で、盛大に送り出してもらえるようなポジションにいたのだとしても、それは仲が良かった人たちですればいいことだ。

「なに、ひょっとしてお金出したくないの?」 

「………」

言い方が気になって、私はあからさまに眉をひそめた。

たかが三〇〇円なのに、それすらも渋ってるやつだと思われてるんだろう。お金の問題じゃない。ただ私はみんなにやってないことを今回だけやるのはおかしいんじゃないかって思うだけ。それで相談もなしに内輪だけで決めたことを、勝手に押し付けてくるところも納得できない。

「じゃあ、柴田さんは出さなくていいよ。その代わり柴田さんが転校したり、なにか困ったことがあっても誰も助けないからね!」

どうせ私が転校しても、プレゼントを贈ろうという計画すら立てられないし、今だって私のことを腫れ物みたいに扱ってるくせに、今回のことがなければするつもりだった、みたいな言いぐさをされても困るし、普通にムカつく。

でも、どうだっていい。こっちだって馴れ合うつもりはないし、協調性なんて、世界で一番大嫌いな言葉だ。