紫陽花が泣く頃に



家に帰ってからも、柴田を掴んだ時の感触が残っていた。それを打ち消すように、制服のままベッドに倒れ込む。

空気の入れ替えができない部屋は湿っぽくて、天井にできたシミは日に日に大きくなっていくばかり。

この一軒家はじいちゃんが残してくれたもので、金銭的なことで言えばかなり裕福なほうだ。

今でも田んぼや畑が有り余るほどあるし、裏手にある山もうちの所有物らしい。でもどれだけ自由に使えるお金があっても、どれだけ広い家に住んでいても、俺の日常は学校と自宅の往復だけ。

こんな立派な家を残してもらって、部屋とトイレしか行き来しないなんて贅沢だと思う。合わせて寂しいことだとも思う。

でも美憂はうちのことをよく〝あたたかい家〟だと言っていた。俺の部屋は自分の部屋よりも居心地がいいと、遊びに来てくれた回数は数えきれない。

俺も美憂がいてくれるだけで、よかった。

他愛ない会話をしてるだけの時間でも、愛おしくて仕方なかった。

だから今でも思う。

どうして神様は美憂を選んだのだろうと。

なぜ誰よりも優しかった彼女が、あんな重いものを背負わなければいけなかったのだろうかと。

いくら考えても答えは出ないのに、俺は美憂がいないことを誰かのせいにしたいんだ。