情けない気持ちを当て付けるかのように、自販機のボタンを強めに押した。
ガチャンッ!
出てきたのは、つぶつぶ入りのオレンジジュース。これは彼女が好きだった飲み物でもある。
自販機にこのオレンジジュースがあると、まるで宝物を見つけたみたいに目を輝かせて、今日飲む用、明日飲む用、明後日飲む用と、最低三本は買っていた。
俺は今飲む用として買ったジュースを抱えた。すると、俺が退くのを待てなかったように、女子が割り込んできた。迷わずに押していたのは、俺と同じオレンジジュースのボタン。
「げ……」
思わず心の声が口に出てしまったのは、ジュースを買った人物が柴田だったからだ。
べつにこのオレンジジュースは俺のものじゃない。でもよりにもよって、なんで柴田が同じものを買うんだろうと思ってしまったのと同様に、柴田も俺に向けてそういう顔をしていた。
ムスッとした態度をむき出しにしながら、柴田は彼女と同じフローラルの香りだけを残して去っていく。
柴田はいつもひとりで行動してるから、おそらく友達はいない。勝ち気な性格と相まって、周りからも一線を引かれているのかもしれない。
……なんて分析している俺だってひとりだから、柴田のことをとやかく言える立場ではないけど。
……ぴちゃ。
通路の手すりに落ちてきた雨が、俺の頬に飛んできた。
もしも彼女が生きていれば、同じ高校に進むはずだった。そうしたら今も俺の隣にいて、おそろいのオレンジジュースを選びながら、きっと笑ってた。
そんな幸せは、もう永遠に訪れない。
頬に当たった雨を触ると、最後の日の彼女のように、とても冷たかった。



