「柴田の聞き間違いってことはない?」
「そっちこそ記憶が間違ってるんじゃないの?」
また私たちは、不思議に思う。小暮の話と私の話は違った。美憂は嘘が嫌いだからデタラメなことは言わないだろうし、自分で話を作るほど器用でもない。
「じゃあ、この雨は……」
傘を傾けて空を見上げる。
雨粒が確認できる視程は限られていて、高い場所から降ってくる雨は見えない。
そんな果てしなく遠い場所から、私たちを濡らしている雨は一体なんなのだろう。
美憂は答えを知っているのだろうか。
「柴田。そんな道の真ん中で突っ立ってたら危ないぞ」
小暮の声にハッと我に返った。止まっていた足を再び動かそうとした時。「ププー!!」という地鳴りのようなクラクションが辺りに轟いた。
気づくと、右折してきたトラックが目の前にいた。
「――柴田!!」
ビニール傘が、空中に飛ぶ。
ドンッ!という衝撃音を最後に、私の意識は途切れた。



