紫陽花が泣く頃に



今日は小雨のわりには、よく濡れる。小暮はなぜか校舎を出てから無言だった。べつに一緒に帰る理由も、話を紡がなきゃいけない理由もないけれど、なんとなく気まずい。

「あのさ、これから変なことを聞くけどいい?」

静寂を破るように、小暮から問われた。

「なに?」

「もしかして柴田って、水飴症候群のこと知ってんの?」

その質問に驚きはなかった。お喋り好きの美憂ならきっと彼に水飴症候群のことを話していると思ったからだ。

「知ってるよ。私も美憂から聞いた」

「そっか……。じゃあ、柴田はこの雨の原因が俺にあるってことも知ってたんだな」

「え?」

「最初なんでそんなに嫌われてるのかわかんなかったけど、なんか納得したわ」

「ちょ、ちょっと待って」

勝手に納得されても困る。

この町の言い伝えのことは、たしかに知っている。
そんなこと起こるわけないって思ってたけど、気象庁でも説明できないこの雨を見たら信じざるを得ない。でも……。

「なんで雨が小暮のせいなの? 普通に考えて原因は私じゃん」

「え、逆になんで? だって言い伝えは残された恋人が彼女の死を悲しんで流した涙が雨になったって話だろ?」

「違うよ。残された妹が姉を想って流した涙でしょ?」

ふたりして顔を見合わせて、「ん?」「あれ?」と首を傾げた。