紫陽花が泣く頃に



「想像してた妹とは違ったでしょ」

「まあな」

「私もあんたのことを色々勘違いしてた。美憂があまりにも小暮のことを褒めちぎってたから、もっとしっかりしてて完璧な人だと思ってた」

美憂が話してたアンタは誠実で穏やかで。目が離せない美憂のことを包みこむような包容力があって、もっと大人びた人だと思ってたから」
 
「悪かったな。想像と違って」

「まあね」

柴田がほくそ笑みながら、わざと同じことを返してきた。

俺のことを美憂がどのように話していたのかはわからない。だけど俺たちは何年も前から美憂を通して繋がっていたんだと思うと、不思議な気持ちになった。

「美憂は柴田のことばっかり話してたよ」

昨日からずっと、泣いていた柴田の顔が頭から離れない。だけど言葉にしなくても、その心に引っ掛かってるものなら検討がつく。

「素直じゃないけど可愛くて。お母さん似なのに自分はお父さん似だって言い張ってる妹から私は離れられないんだって言ってたよ」

なにが救いになるのか。どんなことを言えば心にある霧が晴れるのか。俺にできることがあるなら、柴田が知らなかった時間の美憂を教えてあげることくらいだと思った。

「ずっと妹の気持ちなんて考えずに突っ走ってたから、仲直りする資格もないって悔やんでた」

「……そう」

柴田の返事はひと言だったけれど、その瞳が潤んでいるのは気のせいなんかじゃない。

過去には、戻れない。
美憂にも、会えない。
だったら、俺たちはどうしたらいい?

「雨、やまねーな」

「うん」

俺と柴田は美憂のことを想いながら、涙のような雨をずっと窓から眺めていた。