テスト二日目の学校も午前中で終わった。みんな早々に帰宅していく中で、俺はカバンを持って図書室に向かう。窓際に沿うように配置されたカウンター席。そこに柴田の姿があった。
俺は昨日の柴田を思い出す。雨の中で泣いていた彼女は、ガラス細工のように繊細だった。まるで自分の涙に溺れてしまいそうなほどに。
「テスト勉強?」
ゆっくりと近づいて声をかけると、柴田は驚いたように振り向いた。以前だったら鋭い眼光が飛んでくるところだけど、柴田はすぐに俺から視線を外した。
「……別に」
昨日のことを気にしているのか、その顔は少し気まずそうだった。柴田の手元には教科書とノートが広げられている。けれど、勉強が進んでる様子はない。俺には静かな場所で考え事でもしているように見えた。
「隣、座っていい?」
「他の場所も空いてるけど」
「でも隣も空いてる」
そう言うと、柴田は呆れたようにため息をついた。
空から降ってくる雨が、綺麗な滴となって窓に張り付いている。そんな雨の動きを見ながら、柴田が不器用に呟いた。
「……昨日は、ありがとう」
俺のことを大嫌いだと突き放した柴田。それでも引き下がらなかったのは、放っておけないという勝手な私情だった。
お礼を言ってくるってことは、少しでも柴田の救いになれたんだろうか。そうだったら、嬉しいけど。
「俺、美憂に妹がいることは知ってたけど、てっきり、一回りくらい歳の離れた子だと思ってたんだ」
美憂との思い出の中には、いつだってまだ見ぬ〝妹〟の存在があった。



