「おーい! 雪ー?」

「あ、お兄ちゃん! どうしたの?」

「雨すごいから迎えに来たんだけど………」


車の運転席から顔を出したお兄ちゃんは、不審そうな顔をして葉月先輩を見ていた。


「………どうも」


葉月先輩は笑顔でお兄ちゃんに会釈する。


「えっと……こちらお友達の佐東葉月先輩です!」


私は慌てて葉月先輩をお兄ちゃんに紹介した。


「さとう………つき……?」


お兄ちゃんは名前に覚えがあるのか、少し悲しそうな顔をした。


………ど、どうしたんだろう。


「葉月先輩! 今日はここまででいいです!」

「そうだな、また明日」

「ありがとうございました!」


私は葉月先輩に手を振りながら、助手席に座った。


「あいつの名前……なんか引っかかるんだよな」


お兄ちゃんは、珍しく怖い顔をして考え込んでいた。