二階堂と香世との出会いは、
遡ること3年前の冬の夕暮れ時だった。

二階堂は商店街の街路樹を足速に歩き家路を急いでいた。

香世は姉と使用人と一緒に、
年末のお正月に向けて買い出しに来ていた。

そこを見ず知らずの通り魔男が1人、
右手にナイフを持って立っていたのだ。

気付かず香世達はその男の前を通り過ぎる。

その瞬間、ターゲットにされた姉に男が襲いかかる。

姉が驚き転倒して転ぶ。

男が振りかぶって姉を襲いかかろうとする間に入り、香世は姉を身を挺して庇う。

それを見た二階堂は反射的に駆け寄り、
寸でのところで刀を掴む。

後は、日頃から鍛え上だ体を武器に刀を叩き落とし、一本背負いの如く男を背負い投げ飛ばす。

一瞬の出来事に香世は何が起きたか分からないが、姉も自分も無事だった事に足の力が抜け座り込む。

二階堂は男を背後から押さえ込み、
自分のネクタイを外して後ろ手に縛り上げる。

香世は助けてくれた男の手から血がポタポタと垂れているのを見つけ、急いで駆け寄る。

「助けて頂きありがとうございます。
お怪我は⁉︎大丈夫ですか?」

彼女に当たるか当たらないかのタイミングで滑り込んだ為、護身でもっている短剣で応戦すると彼女に当たる可能性を瞬時に判断し、
咄嗟に手で掴んでしまった。

「大丈夫です。かすり傷ですから。」
二階堂は騒ぎになっては困ると思いその場を離れようとする。

「待ってください。」

香世は咄嗟に、
自分の着ている着物の長襦袢の小袖を破り、
二階堂の手の傷口に巻きつける。

二階堂は驚き、この時初めて彼女の顔を仰ぎ見る。

長襦袢とはいえ咄嗟に破るとは、なんて潔いのか…。

澄んだ大きな瞳と視線を交わす。