「お願いだから早く…目を覚まして、先輩」
僕は幸希先輩の手を握った。
貴方の声が聞きたい。
笑った顔が見たい。
心の底から笑った顔が……。
「さ、き……先ぱ…」
僕はバイトと学校の両立に疲れが出て、そのまま眠ってしまった。
夢を見た。
幸希先輩が僕に笑って手を差し出している。
あの日…あの雨の日みたいに雨がたくさん降っていた。
『優星』
優しい声で僕の名前を呼ぶ幸希先輩。
僕は貴方に伝えたいことが……っ!!
夢だけど…わかっていたけどそれでも伝えたいと思った。
なのに夢とはいつもいいところで現実世界に引き戻す。
『幸希先輩!待って…』
まだ…夢を見ていたいんだ!
夢にすがろうとする僕に幸希先輩は僕の頭をポンっと手をおいてよしよしと撫でた。
『もう目を覚ましな。…待ってるよ』
え?待ってる…?
誰が……?
待って…幸希先輩!

「ん…」
僕は夢から覚めると頭に何か違和感を覚えた。
誰かの手が僕の頭を撫でていた。
僕は勢いよく顔を上げた。
するとそこには…。
「おはよう、優星」
目を覚まし、僕に笑いかけてくれる幸希先輩がいた。