あの雨の日、橋から飛び降りようとしたのを助けてくれたのは"君"でした

会社のための結婚なんだと私は幼いながらにもわかった。
婚約したのは私が小3の時。
もう私の心は空っぽだった。
両親から欲しいと思っていた愛情ももうどこにもない。
毎日椅子に座って書類や勉強だった。
時間がある時はお母様に暴力を振るわれた。
学校でも家でも居場所がない。
けれど婚約者の人なら私のことを受け入れてくれるかも？
そんな淡い期待をしていたのを間違いだったと気づくのには時間はかからなかった。
出会ってすぐに彼……婚約者である堀北栄知は私に言ったのだ。
『会社のために仕方なく婚約するんだからな！別にお前なんか好きじゃない……！』
そう彼は言った。
出会いは最悪で私はまた悟ったの。
あぁ、ここにも私の居場所なんてないんだ。
そうわかった。
だから私は偽りの笑みで言った。
『はい、存じております』
誰も私のことを愛してなどくれない。
もう……疲れちゃったよ。
そして栄知の知り合いである琳斗と美琴を紹介された。
美琴は私に懐いてくれた。
久しぶりに誰かに笑いかけてもらえた。
そんな気がした。