洋食趣向の母さんにしては、サバの味噌煮を作るなんてめずらしいな
 しかし・・こんなに大量に作ったはいいが、誰が食べるんだろう?

 「これは・・?」

 今度は大皿の上に山盛りの白い物体を見つけた
 と・・豆腐だよ・・な?
 豆腐一丁を四等分に四角く切った物で、表面に薄く衣が付いているが、原型を維持しているものがほとんどない

 新種の食べ物なのか?
 
 恐らく、新製品好きの母さんが買ってきたものだろう。触らない方がいいな


 「あら、皇ちゃん帰ってきてたの」
 ふぁぁぁぁlとあくびをしながら、母さんが台所に入ってきた

 「ただいま。悪い、起こしてしまった?」

 「違うわ。それより聞いて頂戴。晶ちゃんたら響さんの事どう思っているのかしら?今日だってね」
 母さんは息次ぐ暇もなく話始めた

 晶が狩野の事をどう思っているか知らないし、聞きたくもない
 まだ、聞ける余裕がオレにはない

 「母さん、オレ疲れているんだけど・・」
 「今日は早く帰ってきたと思ったら、皇ちゃんの料理を作り始めるし、兄妹が仲がいいのは良い事だけど、付き合い始めが肝心でしょ。そう思わない?皇ちゃん」

 「オレ・・の?何?」
 まさか、味噌煮を作ったのは、晶?

 「あれ、母さんが作ったんじゃないの?」

 「お母さん、青味のお魚嫌いだもの作るはずないじゃない。それより、自分の彼より兄の方を優先する晶ちゃんなんだけど・・」

 晶、オレの好物知っていて、作ってくれたなんて
 すげぇ、マジうれしい

 「皇ちゃん、何がおかしいの!?」
 「いや、まぁ、別に、その、なんだ」

 自分で何を言っているんだ?
 今日、嫌な事ばかりあったせいか、晶の存在が余計にうれしい

 とすると、大皿に盛られてあるあの白い物体も・・

 「母さん、あの大皿の食べ物?も晶が作ったのか?」
 「そうよ。皇ちゃんの好きな揚げ出し豆腐」
 「あっ揚げ出し!?」

 新種の食べ物かと思っていた
 大皿に盛られた、揚げ出し豆腐?を見る
 どの角度から見ても、豆腐には見えない。しかもあんな大量に

 晶の奴、密かにまだ怒っていって、遠巻きに嫌がらせをしようと考えているのか?

 たとえそうだとしても、オレが謹んで受けるのには間違いないけどな