昔から、探し物は得意だった

 特に晶に関しては、誰よりも負けない自身がある

 五十嵐の話によると、晶は白いワンピースを着て、玄関にはミュールが置いてあったというから、裸足で逃げ出したのだろう

 そんなに遠くには行っていないはずだ

 こんな時、認めたくはないが、兄妹として過ごした勘が頼りになる

 あいつの・・行き先・・家か?
 そんな、すぐに見付かる所に、隠れるはずがない

 晶の好きな場所
 晶の・・隠れる場所・・

 「あそこかもしれない」
 オレは思いついて、その場所に向かって走り出した

 幼い頃、晶がよく寄り道した場所
 
 あいつが、辛い時、悲しい時に逃げ出す場所

 そこしか、考えられない。ただ、どこの公園なのか・・だ

 近所には、公園が4つある。どれも晶が立ち寄っている場所

 片っ端から、あたるしかない

 まずは、最初の公園
 ここは、晶の好きなジャングルジムがある

 あいつは、とかく高いところに登るのが好きで、ジャングルジムの天辺に座って夕日を見ていた。スカートの下が丸見えだという事も気にせず・・

 「晶!あきら!」
 見渡す限り、晶の姿はない
 ここは、木の陰に隠れるような場所はないから、いないな

 次だ。次の公園に向かって走り出す

 2つ目の公園は、晶の好きなブランコがある
 ここのブランコは鉄の鎖で吊るされているのではなく、太い縄で吊るしてあるのが特徴

 晶は、このブランコを漕いで、ミシ・ミシという縄の軋む音が好きだった

 ブランコには子供が乗っていた

 「晶!何処だ!?返事をしてくれ」

 「僕、『あきら』だよ」
 小さな男の子が、オレの前にやって来た

 「君も『あきら』って言うのか。でも、お兄ちゃんが探しているのは、別の子なんだ。ごめんな」

 男の子の頭を撫でて、そっと笑う 

 「僕の友達に、『あきら』っていう子、まだいるよ。呼んでこようか?」

 「ありがとう。でも、きっとその中にはいないよ。お兄ちゃんの探しているのは、女の子だから」

 「女の子なのに、『あきら』なの?」

 「女の子だから、『あきら』なんだ。カワイイ名前だろ」

 「うーん?」
 男の子は頭をひねって走っていった

 名前・・
 晶が名前で、いじめられて、泣いていた公園・・そこかもしれない