斜め前の遠藤君。

 わたしが二個目を頬張っているうちに、遠藤君は残りのパンをあっという間に平らげてしまった。
 早くしないとお昼休みが終わっちゃう。
 わたしはあと半分になったあんパンをせっせと口の中に詰め込んだ。うん、桜の塩漬け、やっぱりいい仕事してる!

「一口、ちっちぇー」

 聞こえてきたつぶやきに、思わず食べる手を止めた。組んだ膝に頬杖をついて、遠藤君がわたしの顔を覗き込んでいる。

「あっ、ごめんね。今すぐ食べるからっ」

 慌てて残りを口に放り込むと、わたしはウーロン茶で一気に流し込んだ。パンって水分含ませると、途端に面積小さくなるから不思議だよね。

 ズコーとパックが勢いよく鳴って、恥ずかしくてストローから唇を離した。ガサツなオンナって思われたらどうしよう。怖くて遠藤君の顔、見らんなくなった。

「大木、あのさ……」

 さっきまでとは打って変わってすごく真面目な声がした。今のでドン引きれちゃったかな。
 不安で目を泳がせてるわたしのことを、遠藤君はさっきよりもうんと近くで覗き込んでくる。