斜め前の遠藤君。

 促されてわたしはカスタードの乗ったブルーベリーパンと、芥子(けし)の実が散らされたふっくらつやつやのあんパンを選んだ。
 あんパンに鼻をうずめて匂いをかぐのが昔から好きだ。そう言ったら遠藤君に、なんだそらって笑われてしまった。

「それにしても女子って甘いやつ好きだよな」
「でもこのあんパン、中に桜の塩漬けが入ってておいしんだよ?」
「まじでか。俺それ苦手だわ」

 遠藤君は真っ先にウインナー入りのパンを手に取った。わたしなら食べきるのに十分以上かかりそうなそれを、遠藤君は三口であっという間に平らげてしまった。

「本当にそんだけで足りんの? もっと選ぶ?」
「ううん、大丈夫。食べるのいつもこのくらいだから」
「まじでか」

 時間があれば量も食べられるけど、何より今は遠藤君と一緒にいるってことでいっぱいいっぱいだ。

「あ、そうだ大木、金いくらかかった?」
「え? いいよ、わたしが勝手に買ってきただけだし」
「いや、食べた分はちゃんと払うし」
「別に気にしないでいいってば」
「ん、じゃあ貸しひとつってことで」

 うわ、ますます仲のいい友達みたいじゃん!
 でもふたりきりの時間なんてこの先二度とないだろうから、恥ずかしいけどもっとがんばれわたし!