斜め前の遠藤君。

「待って、今のなし。今やり直すからちょっと待って!」

 わたしに手のひらを向けて、遠藤君はすーはーと息をした。かと思ったらいきなりがっと両肩を掴まれる。

「大木、俺と付き合わない?」
「え、付き合うってどこに……?」

 気づいたらそんなことを言ってしまっていた。
 え、うそ、なにわたし。もしかしてとんちんかんな返事した!?

「まーじーでーかーっ!」
 
 頭を抱え込みそうになったわたしの前で、遠藤君が先に頭を抱え込んだ。ぐちゃぐちゃに髪を掻きむしって、今度は遠藤君がプチパニックに陥ってる。

「え? 俺やらかした? 大木いつも俺のこと見てるみたいだったし、今日もわざわざパン買ってきてくれたりして、ってアレ? もしかして俺の勘違い? 嘘、マジで? 先走り過ぎて玉砕コース? えええ、そんなことならもっと作戦練ってから慎重に告ったのにっ!」

 頭の処理が追いつかなくて、わたしは呆然と遠藤君を見た。