こっち向いてよ、佐久間くん。

「芽依さん…ってお手洗いに舞ちゃんといた方だよね!もちろん仲良くなりたい…!!ぜひ一緒に帰りたい!!」


「よかった。じゃあ帰れるようになったら席で待ってて」


帰りに誘われるなんて夢みたい。一緒に帰ろって言われるのは入学して1ヶ月くらい経たないとかなと思っていたから、初日に『高校の友達と帰る』ってことができてとってもうれしい!


_ガタッ


誰かが椅子を引く音。


近くの席の人かな?


話しかけてみようと思って前を向き直した私は、私の2列前の席に座った人を見てフリーズした。


「佐久間、くん…」


はっとして口を閉じたけど、幸い周りには人はいなくて、私の呟きを聞いている人は誰もいなかった。


まさか、同じクラスだなんて。


悪いことは重なるものだ。この学校に佐久間くんがいるというだけでもやもやしていたのに。


思い返してみれば、新入生代表挨拶の時にクラスを言っていた気がする。