橘は美優をちらっと見て気まずい顔をする。

橘が美優にブラックな部分を見られたくないのと同じく、俺も矢田さんに見られるのは気が引ける。

だけど、矢田さんを好きになってはいけないことくらい分かっている。



「どっちにしても、俺こそ矢田さんに近付けねぇよ」


その言葉を発したら、胸がずきっと痛んだ。




俺はいい気になって、女と遊びすぎていた。

それを理由に、大学時代に初めて本気で惚れた女性にフラれた。

こんな俺と付き合っても、幸せになれる人なんていないだろう。

ましてや、矢田さんだ。