=真冬の夜、桜が舞った②=



「”そのこと”、彼からは聞いてるんだよね、私…。病院で節操のない井戸端会議の中身、毎日お母さんから聞かされてるんだよ、りゅーじん」


「…」


「彼…、別に血が繋がってないからって、今のお母さんを頭から拒絶してないのよ。”今度こそ”、暖かくふれあえる家族をって…。りゅーじんはそう願ってるんだよ、お母さん…」


「末樹…、あなた…」


「この前、私の家の前で言ってたよ。なんでも話せる和やかな家庭っていいなって…。しんみりした表情でさ…」


「そうなの…」


母としての直美は、この場でそれ以上を娘に聞き質すことはしなかし、できなかった


***



翌朝…


「…そう、文科省がねえ」


「うん…。まあ、私達はだからって、特段気に入られるような結果に持って行く気はないけどね。昨日、文科省の目に触れることになりそうだって雑食グループのメンバーに伝えたらさ、全員がそう言ってた。ナナボシ先生も学校のご機嫌なんか気にせず、クズコの件も議論していいって言ってくれてさ…」


「うふふ…、なんだか、お母さんもその発表会をこの目で見たくなって来たわ」


マッキは、母がこの長期課題にとても関心を寄せてることに、やや不思議な思いも抱いていた


”まあ、娘が代表者で7人を取りまとめてるってのもあるんでしょ。討論の中身より…。ましてや、雑色のメンバー、ラッセル&コンボイとかクズコとか、PTAからしたらモロ不良のメンツ勢ぞろいだもん、なおさらだよね~(苦笑)”


この時のマッキは、そんな切り口で母の反応を受け止めていたようだ


***



「…ああ、末樹、傘もった?天気予じゃあ、雪が降るらしいってからね」


「うん。折りたたみ、カバンの中に入ってる。じゃあ、行ってきまーす❣」


「行ってらっしゃい。気をつけてね…」


母は、一応フツーに見送ってくれた



***



いつもの時間、いつものように家を出ると、寒さはいつも以上だった


”いや~、今日はメチャクチャ寒いなあ。こりゃ、雪でしょ、やっぱ…。ひょっとして、今日の帰りはカレとあいあい傘かな…”


背を丸めマフラーに首を潜らせたマッキは、白い息を吐き吐きの顔をほころばせながら、早歩きで学校に向かった


その後ろ姿は、どこかスキップをしてるようでもあった