……志貴くん……。  

来てくれた……。


それだけでホッとして力の抜けた私は、ヘナヘナとその場にしゃがみ込みそうになってしまう。

そんな私を駆け寄って支えてくれた志貴くんは、私を掴んだままの光司くんの手をグッと掴み捻りあげる。


「いっ、痛っ……!」


そこでようやく不快だった手が離れた。


「無事か⁉︎」


私は掴まれていた腕を摩りながら、なんとかこくこくと頷く。

それから「鶴崎さん!」と志貴くんに鋭く呼ばれた彼がどこからかサッと現れて、私を光司くんから庇うように引き離してくれた。


「── もう一度聞く。ここで、何をしている」


地を這うような低い声だった。その背中は、怒りに打ち震えていた。

警察が現れたことに、光司くんは明らかに動揺している。


「い、痛い痛い!いや……、オレはその……っ、彼女にヨリを戻そうって話をしてただけで……!ただの痴話げんかだよっ」

「最近この辺りをウロついていたのはお前か?」

「別にっ、家に行っても彼女に会えないからこの辺りで待ってただけだって!」

「それも一度や二度の話じゃないな?詳しいことは署で聞かせてもらう。……鶴崎さん」

「はいはい、任せて。じゃあちょっと、こっちに来てねー」


再び呼ばれた鶴崎さんが光司くんを拘束し、今度は志貴くんが私を支えて寄り添ってくれる。


「やめろ!オレは何もしていない!」

「迷惑防止条例違反の疑いがあるからねー。ちょーっと署で話聞かせてねー」

「離せっ……!」


鶴崎さんは飄々とした声とは裏腹に、光司くんに抵抗する隙を与えない力で彼を拘束している。

私はそれを、ただ呆然と眺めることしかできない。