その後特に熱が上がることもなく連絡するような〝何か〟も起きそうになかったので、いつもよりも早めの就寝前に、恐らく心配してくれているであろう犬飼さんにはメッセージを送っておいた。


【おかげさまでもう大丈夫そうです!なので犬飼さんも今日はどうかゆっくり休んで下さいね。昨日も今日も、本当に本当にありがとうございました。】


でもすぐにハッ!となって、【これは本当に大丈夫なやつですのでご安心下さい!ではおやすみなさい】とすぐに追加で送信する。

送ってから、何だろう、この念押し……、と一人苦笑していれば、それらは数秒も掛からないうちに既読になった。多分、ずっと気にしていてくれたのかもしれない。


【ああ、安心した。連絡ありがとう。葉菜先生も暖かくしてゆっくり休んで。おやすみ】


返信は犬飼さんらしい絵文字も何もない簡素な文面だったけれど、画面の向こうの彼が何故だかふ、と微笑んでくれている気がして、私の顔は自然と綻んだ。


── そしてあれから一ヶ月とちょっとが経った、二月の下旬。


いつもは無表情で何を考えているのか分かりにくい犬飼さんが、あの日は割と分かりやすくてとても優しかったから。

だから少しだけ近づけたような気がしていたのだけれど、それは、やっぱり私の勘違いだったのかもしれない。

だって、それ以来特に連絡が来ることもなければ、たまのお散歩で顔を合わせても、以前と何ら変わらない敬語を纏う犬飼さんのままなのだから。