「私も妹がいるので、分かります」


言いながら、子供達への接し方も手慣れていてこんな風に面倒見が良いのは、犬飼さんが三兄弟の長男だったからなのかと納得する。

うちは、両親が共働きで昔から忙しい人達だった。だから六つ下の妹、菜乃(なの)の面倒は当時から私がよく見ていて、進路を決める時に保育士の道を選んだのもそれがきっかけ。

そういえば昔から健康優良児ではあったけれど、たまの体調不良は忙しい母に心配を掛けないようにと我慢する癖がついていたし、保育士になってからは子供達から流行病を貰うこともしばしばで。

そんな時でも一人伏せっているしかなかったから、こういう時に誰かが近くにいてくれるって、すごく心強い。

そう思いながら「いただきます」とスープをひとくち口に運ぶと、口いっぱいに野菜の甘味と旨味がふわりと広がって、こくりと飲み込めばそれは、胃にも優しく染み渡った。


「美味しい……」

「それは良かった」


ほっと安堵の表情を浮かべる犬飼さんを見て、何だか心までとても温かくなる。

ほわっとした気持ちのままスープに視線を戻し、よし、もうひとくち…、とスプーンを口に運ぼうとしたところで、ベッドの傍らの犬飼さんが移動する気配もなく、その視線が尚も私に注がれたままなことに気がついた。