「朝飯は食えそうか?」

「え?」

「大したものじゃないが用意した。食えそうなら一緒にどうだろう」


そういえば、さっきから食欲を刺激するような美味しそうな匂いが私の鼻腔をくすぐっている。


「いえ!かなりご迷惑お掛けしちゃってるので、もう帰りま……、……っ、」


とても魅力的なお誘いとは思いつつもさすがにもうこれ以上は、と慌てて辞退してベッドから降りようとすれば、クラッと眩暈がしてフラッと身体が傾いだ。

それを咄嗟に支えてくれた犬飼さんがハッと息を飲む気配がして、それとほぼ同時に額にひんやりとした手が当てられる。

……あ、冷たくて気持ちいい── 。


「……熱い。葉菜先生、熱あるな。悪い、すぐ気付かなくて。ベッドに戻って」


どうやらこの鈍い頭痛は二日酔いのせいだけではなかったらしい。

やんわりとベッドに押し戻されるけれど、熱があるなら尚更帰らなきゃダメだ。犬飼さんに移したら大変だもの。

でもそれを自覚してしまった途端、頭がぐらんぐらんと揺れ出してついには視界もゆらゆらと波打ち出す。吐き出す息もなんだか熱い。

さっきまでは平気だったのに、熱ってどうして自覚すると急にいろいろいっぺんに症状が押し寄せてくるんだろう……。

身体が全く言うことを聞いてくれなくなって、私を寝かせようとする犬飼さんに抵抗することはもう出来なかった。熱測ってみて、と体温計を渡されて、素直に脇の下に挟む。

昨日から、私は犬飼さんに迷惑を掛けてばかりだ。