これが恋だなんて、知らなかったんだよ。





うそ、逃げ道なんて嘘。

こっちのほうが居たたまれないかも…。



「掴みやすそう」


「つ、掴むの…?」


「うん。リード的な」



そういう意味の、いいね、だと。

外では障害物リレーが始まったようで、生徒たちの笑い声や実況が聞こえてくる。


窓から降り注ぐ日差しがキラッと、彼の耳に付いている特別なものを光らせた。



「三好くんも…ピアス」


「ああ、忘れてた」



「実はこれイヤリング」と言って、簡単に外してわざわざ見せてくれる。


高田さんとお揃いだってみんなは噂していたけれど、どうなんだろう。

忘れていたくらいだから大して思い入れがないのか、それとも三好くんはそーいうものに興味を示さない人間なのか。



「付けてないとうるさくて」


「…そうなんだ」


「俺は人形だからね。とくに特別な日には着飾ってあげないとでしょ」



人形なんかじゃない。
三好くんは、三好くん。

こんなにも簡単な言葉すら口に出せないもどかしさが、心に小さな後悔となって残る。