これが恋だなんて、知らなかったんだよ。





たとえそれが、自分の気持ちを無理にでも方向転換しようと。


友達だから好き。
かけがえのない存在として、大切。

そんな気持ちを、救いたいがために“恋人として”というものに変えた過去。



「あたしっ、こんなお父さんみたいなうるさい男なんか嫌だから…!」



そうか、俺は“足りなかった”んじゃない。
間違っていたんだ。

そもそも俺がセレナのために動いた積極性は、間違っていた。


セレナは吹っ切れたように笑ったあと、自信のない少女の目で俺の顔色を伺ってきた。



「なつくん…、あたしと出会えて、よかった…?あたしなんかと友達になれて……、よかった…?」


「……“なんか”じゃない。“なんか”はやめろ。…よかったよ。ありがとう」


「う~っ、イケメン手放したあたしを褒めて…!」


「ははっ、…もう大丈夫だ」



手放すことで見えるもの───いつかに俺がセンパイへ贈った言葉を思い出した。

無意識だったかもしれないけど、セレナは俺を“捨てた”んじゃなく、あえて“手放した”んだ。


それは前を向くために、自分の意思で。



「じゃあもう…返して」


「え?」


「あたしがなつくんにあげたやつ」