これが恋だなんて、知らなかったんだよ。





「やだ、やだ…っ、あの頃のあたしに戻ったら…、なにも無くなっちゃうっ」


「そんなことない。セレナはぜんぶ持ってた」


「またいじめられてっ、またキモいブスって言われて…っ、バイ菌って言われて…っ、だから見せないように顔隠して…、わざと太って地味に生きてっ、
それでもまたいじめられちゃうんだ……っ」


「…そう、だよな。こんなに…頑張ってたもんな」


「っ……」



自分なりに、セレナなりに必死に精いっぱい生きていたんだ。

あのときの頑張りを、チヤホヤされては噂に振り回されるような、そんな形のない今に消しちゃいけない。



「なんで……なつくんが、泣くの…?」


「…そうやって頑張ってるセレナを、俺はずっと見てたから」


「っ…、あんなっ、あんなあたしのことなんか誰も好きになってくれないよ…っ」


「セレナ。俺はそんなセレナを好きになったんだよ」


「───……」



俺がそう言った瞬間、それまで張っていた糸が切れたように。



「ごめんなさい、ごめんなさい」と、セレナは何度も何度も繰り返して泣いた。



ごめんなさい、どーでもいいって言ってごめんさい、わすれたなんて言ってごめんなさい、

だいじなもの、放ってごめんなさい、

なつくんのこと、わんぱんだのこと、たいせつにできなくてごめんなさい、